74 :名無しさん@ピンキー:2005/11/29(火) 16:07:31 ID:UhwZCrgV

「ねえ、カーラ機嫌を直して」

ウバルドは大げさに嘆息してみせた。

胸元に差し入れようとして振り払われた手を、

芝居がかった仕草で撫でながら。

「いやよ!衣装は黒っぽいし…私はピンクが好きなの!

大体何で私があんな役なのよ!この私が!ラ・カルロッタが!」

「しょうがないよ、あいつを罠にかけるためだ。

あいつの言うとおりにしないと…」

「そう言うあなたも、今日の稽古では随分嬉しそうに触っていたじゃないの!

あの…あの小娘、クリスティーヌ・ダーエを!」


歯を剥き出しにして唸るところが猫を思わせて、

知らずに頬が緩みそうになるが、かろうじて堪えた。

かわりにカルロッタの目を見詰めながら、ゆっくりと口を開く。

「私が小娘なんかに興味がないことは、君が一番よく知っているだろうに」

「あんなチビ…!」

「あんなチビで骨ばっかりで、ぼーっとした子供には。ファントムとやらの気が知れない」

「あのパトロン殿の気もね」

ふんと横を向いて、それでも怒りの矛先は変わったようで、

その目からは幾分険しさが薄れた。

「いいじゃないか。この公演が終われば、もうあいつにビクビクすることもなくなる」

持ち前の低い声を存分に生かして甘く囁く。耳元に唇をつけ、部屋着の襟に手をかける。

そのまま胸元を大きく寛げたが、動き回る手はもう振り払われなかった。


カルロッタの耳朶を軽く噛む。

「ラ・カルロッタはプリマドンナに返り咲く。6期でも7期でも8期でも。

パトロン殿が小娘に執心なら幸い、さっさとくっつけてここから出て行ってもらえばいいさ」

柔らかい顎を指先で擽るように撫で上げると、

眉根は寄せたまま、カルロッタは目を閉じた。

「あの子にもファンがいるわ。…私ほどじゃないけど。」

「歌わない歌手などすぐに忘れ去られる…歌わせなければいいんだよ。

君はそうできるだろう、プリマドンナ?」

「そう…そうね。歌わない役はいくらでもあるものね…」

漸くカルロッタの表情が緩むのを見届けて、

ウバルドはカルロッタの夜着の襟を捲り上げる。

掌をそっと腿の内側に這わすと、濡れた吐息をこぼす唇が

ようやく満足げな笑みを浮かべた。


女王様は気難しいが、単純で可愛らしいんだ。

もっと勉強したまえよ。


心の中で支配人達に呟くと、ウバルドはカルロッタの腰に回した手に力を入れた。




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