482 :エロ無しただのネタ :2005/05/08(日) 03:36:34 ID:CslkfhDX

私は考え事をしているらしい彼の後ろからそっと忍び寄った。

せっかくこんな素敵な風景が広がっているというのに、また眉根を寄せてどんな難しい考え事を

しているのかしら。

足音を殺して、鮮やかな色とりどりの花々で出来た花冠を素早く彼の頭に被せると、驚いたように

彼は振り向いた。

慌てて被せたので、歪んでしまった冠が彼の攣ってしまった方の半面にかぶさっている。

呆気にとられたような表情が可笑しくて笑い転げると、私は素早く踵を返して逃げ出した。

「待ちなさい、クリスティーヌ!」

彼が身を起こして追ってくるのを確認して

「うふふ、掴まえてくれたらご褒美を上げるわ!」

花を散らしながら駆けたが、クスクス笑いながらなので力が入らない。

その長い足による大きなストライドで、すぐ彼は私に追い付くと軽く手首を掴んだ。

私はまだ笑っていた。

「全く、クリスティーヌ…お前がこんなにお転婆だとは思わなかった。」

呆れたように低く囁くその魅惑の低音に、私の背筋がゾクゾクする。

笑いを止めて正面から見つめると、彼は明るい光の下に己の無惨な半面を晒している事が気に

かかるのか、いつものように半面を隠すように俯いた。

小さく胸の痛んだ私は背伸びをすると、傷ついた頬に優しく唇を押し当てた。

「まだ気にしているの?私の天使様。あなたは反対側が素敵すぎるから、そのくらいで丁度

バランスが取れているのよ。これ以上素敵になったら他の女性に取られちゃう。」

拗ねたように言ってかるく頬をつついた私に、彼はようやく優しく微笑んだ。

「私の目にはお前しか映らない、お前こそ私の天使だ。」

生真面目な答えにまた笑みが零れる。

「ねえ、掴まえてくれたご褒美が欲しくない?」

甘えた声で告げて、アミンタのようにドレスの肩紐を滑り落とすと、彼は端正な無表情を保とうと

努力したが、僅かに耳に血の色が上るのが判った。

「クリスティーヌ…」

微かに掠れた声で呟き、彼の両腕が私をしっかりと抱き寄せる。


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