554 :
17/22 オチがまた長いんだ。
:2005/05/12(木) 00:22:48 ID:y9vusZkJ
朝。
「・・・・ぅう〜?」
いつもなら、同部屋の親友に思いきり揺さぶられても全く効果が無いほどであるというのに、
めずらしくクリスティーヌは自発的に目を覚ました。
まだ辺りは薄暗く見え、こんな時間に起きれるだなんて、と我ながら感心してしまう。
「・・・!」
ぼんやりと辺りを見回すと、周りに乱立する鏡の群れに映る自分の姿が目に入った。
・・・・また、あたまスゴいことになってるわ・・・・・・・。
手の施しようが無いほど爆発している髪の毛を見て、レッスンまでにちゃんと戻せるかしら…と
一つ溜め息を、
つこうとして、ふと、気付く。
(ということは、またわたし、エンジェルのところに来たまま眠っちゃったんだわ・・・・)
昨日、オペラ座の皆で大騒ぎしてからの記憶が全く無い。一体いつ降りてきたのだろうか。
暗いのは地下だったかららしい。
しかも床に寝ていたらしく、何だか体のあちこちが痛い。
あぁ、わたしって・・・・といつも数瞬で終わってしまう反省を行いつつ髪を掻きあげようと
手を持ち上げて、更に、気付く。
・・・・・・何か、手にかぴかぴしたものがこびり付いている・・・・・・・・。
555 :
18/22 オチ2。
:2005/05/12(木) 00:24:18 ID:y9vusZkJ
無言のまま、そこで初めて、視線を下に落とす。
完全に熟睡している様子の師の顔がまず見えた。
脳内の、状況を正確に把握し判断する部位とは明らかに異なる片隅の部分で、ずいぶんとかわいいわねーという妙な感想をもらす。(そして自分がコレほど爆発してるというのに、全くサラサラなままのプラチナのストレートヘアをみて、何とはなしにカチンとくる、とも思う。)
ワケの分からない事だけを頭に浮かべたまま、ゆっくりと視線を動かす。
目に入るのは、全く目を覚ます気配の無い、彼のその姿。
そして、自分の今の有様。
「・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・。」
只今データを読み込んでいます。しばらくお待ちください。
完了まであと30秒・・・15秒…10秒…5・4・3・2・1
ピ―――――――――――――。
大暴れモード、スタートします。
「キ。キャあぁアあああア―――――――――――――――――――――――――――ッ!!!!!!?!」
地下の静寂をぶち破って、早朝だとは思えないほどのけたたましい悲鳴が一面に響き渡った。
556 :
19/22 オチ3
:2005/05/12(木) 00:25:06 ID:y9vusZkJ
「ッ!!な.な.なん…!?」
突然頭上から降って沸いたサイレンの如き悲鳴を耳にして、ファントムは飛び起き、
ようとして頭を激しく殴打されたような痛みに、そのまま再び倒れかけた。
ぐわん、ごガわんと嫌な音までが脳内で飛び交い、天と地とが回転する。
目の前には星どころか、果てしない銀河が広がっている。
「いッやぁぁあああああああぁアあアアあああああああぁ!!!ェえっなに?なに!?どうしッ…!??
キやぁああああああああああアアアアアアぁぁあああぁあぁ――――――――――――――!!!!」
全く止む気配の無い怒涛の音の洪水に、意識が遠のいていく。
悲鳴の主が愛しい自分の天使だということを理解するにも相当の時間と労力を費やして、
何とか身を起こそうともがく。
557 :
20/22 オチ4。
:2005/05/12(木) 00:25:57 ID:y9vusZkJ
と、突然、何かが此方に向かって飛んでくる!!
「嫌アアアアアアアア!!ヒドイわ!見ないで!!来ないでよぉおおおおお!!!!!!!!」
傍にあるものを手当たり次第に投げまくりながら、大暴れするクリスティーヌを目にして
取り敢えず、自分が彼女に力いっぱい拒絶されている、ということだけを彼は理解した。
「―――――――。」
その事実のあまりの衝撃のおかげ(?)で、次第に眼前の銀河が遠ざかり思考が正常に働き始める。
途端、思う。寒い。
・・・・・何故に寒い・・・・・・・?
ここへ来て漸く、自分の格好に焦点が合う。
辛うじて上着だけは引っかかっているものの、この場合半裸というより全裸、といったほうが正しいの
ではないかという自身のその姿。
同時にクリスティーヌの様子も目に映る。乱れた着衣、肌蹴た胸元、足首に掛かる白い布片。
そして、二人の身体の彼方此方に散りまくっている、白く乾いた、飛沫。
「(な、な、な、何ぃいいイ――――――――――――――――――――――――ッ!!!!?!?!)」
脳内で絶叫しつつ、ファントムは折角戻ってきた正常な判断力が、高く、高くどこぞへと舞い上がって
いくのを、只々感じていた。
558 :
21/22 後もう少し。
:2005/05/12(木) 00:26:45 ID:y9vusZkJ
ひゅん、ガコン!!!
「ぶッ!!」
顔面に正確に飛んできたコップの痛みで、寸でのところでファントムは別世界から生還する。
「あああああぁ!!ひどいわああ!あんまりよ!!ぜったいそうだわ!だってあんまりだものおお!!」
何だかよく解らない理論を展開するクリスティーヌを前に、彼もまた只管混乱した。
「な、な、な、な・・・・・!!」
延々同じ音だけをぱくぱくと繰り返しながら、脳内で自問自答する。
(こ、これは、この状況は、明らかにッ・・・!!こ、こ、コこれは責任問題とか、そういう・・・・!?)
「あんまりだわ!!エンジェルがそんな人だったなんてええ!!うわあああああああああああぁあん!」
―――――――とても理不尽な理由で責められています。
講義しますか? はい/いいえ
脳内の何処かから発信された馬鹿げたその表示を一蹴し完全無視して、ファントムは更に問う。
(昨晩の記憶が全く無い・・・・ッ!然し、こ、コレが客観的に見ても、そういう状況なのは、
恐らく間違いない…!となれば、やはり責任を取るしか……!)
というか、取れるものならそもそもとっくにそうしている事に気付き、一層混乱を深めるファントム。
559 :
〆 以上お疲れ様でした。
:2005/05/12(木) 00:28:17 ID:y9vusZkJ
「っくッ、ひっく、ふぇ・・・・ええええええええええええ〜〜〜!!」
手近なものを全て投げ尽くして、今度は酒瓶を手に取ったクリスティーヌを目にし、流石に硬直を解いた。
「く、クリスティ−ヌ!?すまない!謝る!悪かった!!だ、だから一度落ちつい―――!」
ガッチャン。
慌てて止めようと身を動かした弾みで彼の足が何かを蹴飛ばす。鈍色の金属の塊。―――手錠。
「・・・・・?何だってこんなものが・・・・・・・・・?」
ゆっくりそれを拾い上げたファントムは、あれほど大暴れしていたクリスティーヌがぴたり、と
動きを止めていることに気付いた。
びっくりしたように大きな瞳を見開いた後、何とも言えない不可思議な表情を見せる彼女。
「ええと・・・クリスティーヌ・・・・・・・・・?」
おそるおそる問い掛けると、先ほどとは打って変わった冷静な様子でクリスティ−ヌは返事をした。
「・・・・・。シャワー、浴びてきます。お借りしても?マスター・・・・・・・」
「は、はい…あの、どうぞ・・・・・・」
さっさと衣服の乱れを直し、何事も無かったかのようにすたすたとバスルームへ向かう彼女を
呆然と見送りながら、ファントムは呟いた。
「・・・・どうしたらいいのだ・・・・・・?」
シャワーで身体をきれいに流し、口元まで湯船に浸かるクリスティーヌもまた、何事か考えている様子を
見せつつポツリと一言呟く。
「・・・・どうしたらいいのかしら・・・・・・。」
そんな二人の苦悩を余所に、オペラ座ではまた清々しい一日が始まろうとしていた・・・・・。
(ありがちネタ第2回「クリスを酔わすな」 寒。)
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