643 :
名無しさん@ピンキー
:2005/05/22(日) 03:21:29 ID:aJbAUqES
「ロッテ、ロッテ、とても心配したんだ」初めて会った頃と変わらない
眼差しでラウルは私にそのまっすぐな目を向けた。彼の目の前にいる女は
肉の歓びを知り肉の喜びを得るためにならどんな浅ましいこともする女。
彼が見てるのはあの夏の日の肉も哀しみも知らない少女の私。
小さなロッテと少年のラウル。大人たちの目を盗み2人でする悪戯が楽しかった
あの夏の日々。それからなんと遠くに来てしまったのだろう!
私の目から溢れた涙に驚いたラウルを前にしてマダムジリーの静かな宣告が響く。
「子爵様、今のクリスティーヌは疲れていますから」。さりげなく退出を促すマダムに
「ロッテ、支配人たちには僕からよく話しておいた。君には休暇が必要だとね。
今週末は僕の別荘でゆっくり過ごせるよ。君がお父さんといたあの別荘だよ。
明日迎えの馬車を寄越すから支度しておいで」私にではなくマダムにそう宣告して
ラウルは私の手にキスをして帰って行く。オペラ座のパトロンを扉に促しながら
マダムは私にだけ聞こえるように囁いた。「あの方のお許しがでるかしら?」。
聞こえないふりをしたけれど、目の前にある鏡に写るのは罪に脅えた女と
怒りに燃える仮面の男。あの初めての日のように、この部屋から誰も
いなくなった後、彼は鏡の向こうから私の側にやってくることはわかっていた。
「神様があなたの罪をお許しになるように」私は仮面の男に歌う。
ルチアのように。心から愛する恋人がいたルチアには、妹を愛する兄がいた。
妹が他に愛する男がいることに嫉妬した兄はルチアを犯したのだ。
「許さぬぞ」鏡から出てきた黒ずくめの彼は私をゆさぶり抱き締める。
「どこへもやらぬ誰にも渡さぬ!お前は私の私だけのものだとお前に今夜も
思い知らせてやる!」黒い革手袋をしたままの彼の手が私の首から下におり、
唇がすぐその後を追う。もうすぐ、もうすぐ、私はまた我を忘れてしまうのだ・・・
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