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ギャグ第3弾
:2005/06/05(日) 18:01:29 ID:tIEK4+9h
「…それでね、エンジェルったら、何だか最近お疲れみたいで元気がないのよ…」
オペラ座館内あちこちに貼られた「オペラ座禁酒月間」の張り紙を眺めつつ、メグはとりあえず
ふむふむと聞いてます、ということをアピールした。
先日の騒ぎで破損した壁やら小道具大道具やらは一応原状回復したものの、事態を重く見た母兼師は
断固としてこの一ヶ月はこの目標を達成するようにと主張していた。酒豪である本人が見せる禁酒の
意気込みは相当なものだと言えよう。
「新しいスコアの制作とかであんまり休んだりしてないみたいだし…聞いてる?メグ」
「聞いてるわ、クリスティーヌ。元気がないんでしょ。それで?」
体調に変調をきたしている理由は、どう考えて彼女が挙げた例とは異なっているように思えたのだが。
「…エンジェルにはもうずうっと歌を見てもらっているし、何かあった時には慰めてもらったり
励ましてもらったりしてるもの。わたしにも何かお手伝いできないかしらと思って…」
「…この間、掃除とか禁止されたって言ってなかった……?」
「ええ、だから何かいいアイデアはないかしら?メグ。やっぱりココは基本に返って料理とか…」
「イエ、ほら、それもこの間否定されたって、言ってなかった??ネェ、きっと他にも元気付ける
方法なんていくらでもあるんじゃない???」
再び味見と称した実験台になる自分の未来が垣間見えた気がして、強めに異議を唱えてみる。
「…別に、そこまで拒否されたわけではないんだけど…ムリはしなくていいって言われただけで。
メグは他にいい方法思いつく?」
問われてメグは返答に窮してしまう。いくら一般的に普通の事柄であってもこの親友のすることだ、
どれもこれも相当の破壊力を生み出しそうな気がしてしまう、なんとなく。
「…普通に歌とか歌ってあげるだけでいいんじゃないかしら?…一番無難そうだし……。
どうせそれだけでも大喜びするんじゃない?あの人のことだから。」
「でも、それじゃいつものレッスンと変わらないじゃない?…うーん、意外と思いつかないわね……」
暫く考え込んだ後、クリスティーヌはパッと顔を輝かせる。
「あッ!こういうのはどうかしら?プレゼントとか!」
「プレゼント?でも私たちそんなにお給金もらってる訳じゃないし、何より外に買いにいってる時間って
あんまり無くない?」
「ううん、違うの。中身じゃなくて、それ自体がメインなの。箱の中にイロイロ詰めて、ふたを開けると
わっ!て飛び出すびっくりバコとかのドッキリ☆イベントみたいなの。ワクワクしちゃうわよね」
「・・・・何だかとっても殺傷力が強そうなアイデアみたいな気がするんだけど・・・
フタ開けると爆発したりとか、寧ろゾクゾク…イヤ、ええと今小道具とかの製作所、この間の件で私たち立ち入り禁止
だし、材料調達できないんじゃない?」
彼女から伝え聞くだけでいまいち顔も知らない件の人物の身を、他人事ながらに案じてしまう。
「…そうね、やっぱり作るの難しいわね。道具が無いんじゃ…」
再びううむ、と黙り込んでしまった二人の背中に声が掛かる。
「あレっ、二人ともどうしたんだいこんな所で。何か相談中かい?」
思考を中断し振り返るとクリスティーヌは笑顔で声の主に返事をした。
「あら、ラウル!支配人さんたちとの打ち合わせ終わったの?」
「うん、ついさっきね。それより、二人とも何かあったの?ずいぶん深刻そうだったけれど」
良くぞ聞いてくれたとばかりにクリスティーヌはニコニコと答える。
「そうなのよ!ね、ラウル。元気の無い人に元気になってもらうためのいいアイデアってないかしら?」
「…?疲労回復ってことかい?…やっぱり十分睡眠を取ったり、あとは甘いものとかじゃないかな?
基本的だけどね」
唐突な問いにきょとん、とした表情を浮かべるラウルを余所にクリスティーヌはキラキラと大きな瞳を
輝かせ、ぱん、とひとつ手を打った。何か納得したように一人でこくこくと頷く。
「そうよね!やっぱり基本が一番大事よね!!甘いもの…チョコレートとかケーキとかかしら…?」
「?うん。そんなとこじゃないかな。キャンディ舐めるだけでもだいぶ違ってくるしね、疲れてるときは。
君が作るの?クリスティーヌ。羨ましいな」
「ええ、何か創るのってとっても楽しいわよね!それが誰かの役に立つのなら尚更だわ。うん、そうよ。
だから全然ムリなんてしてないのに、エンジェルったら気を使ってくれて、ね、メグ?」
「…違うと思うけど、クリスティーヌ…そういうのとは……」
何やら盛り上がっている様子の二人から完全に取り残されていたラウルが、はっと気付いて声を上げた。
「えっ!?く、クリスティーヌ、君が、元気になって貰いたい相手って、ま、まさか・・・!」
「そうなの、最近エンジェルったら元気が無くって…ね,ねラウル、こういうのってやっぱりとっても甘いほうがいいのかしら?それとも栄養のあるようなものをいっぱい使ったほうがいいのかしら??」
「へっ?…個人的には甘いほうが…って、いやそうじゃなくて、君、まさか、あ、あいつと…!」
「?そうよ?エンジェル、とっても疲れてるみたいなのに、最近毎晩熱心にしてくれるから(歌のレッスンを)
わたしもつい夢中になっちゃって(歌のレッスンに)、気付くと夜遅くまで続けちゃってたりしてるのよ(レッスン)。
だから、やっぱりわたしにも責任があるし、何か出来ないかしらって思ったの」
「―――――!!!!?!そ、そんなクリスティーヌ、そんなのって、まさかまさかっツ!!!??!」
「・・・あなた、わざとやってない?クリスティーヌ・・・」
「め、メグッ!ここ、これってこれって、まさか、つまり、所謂らぶらぶとかそういうアレとか!???」
「…違うと思いますけど、子爵さん…少なくとも貴方が考えてるようなのとは…」
「さぁ、そうと決まれば善は急げだわ!イロイロ準備しなくっちゃ!今日調理場って使えるかしら…」
「…クリスティーヌ、あなた最近随分積極的で前向きよね…。ううん、本来喜ばしいことだとは思うんだけど…」
「・ ・ ・ ・ ・ ・ 。(トリップ中in花畑)」
「う〜ん、でもどんなのを創ったらいいのかしら??甘いの?栄養満点なの?いっそのこと両方かしら?
オクラチョコレートっていうのがあるって聞いたことあるんだけど…」
「・・・いいんじゃない?きっとあなたが送ったものならショートケーキジュースだろうとビールキャラメルだろうと亀ゼリーだろうと喜んで食べてくれるわよ、きっと。…泣きながら…」
「・・・!!(フリーズ解凍完了)ろ、ロッテ、ね、キミとあいつがそんな関係とか、そんな冗談だよね!?!」
「いいえ、冗談なんかじゃないわ、ほんとにあるんですって、オクラチョコ。…どんなお味なのか
知らないんだけれど…でもきっと身体にいいものよね!二人ともありがとう、わたし、がんばるわね!」
「ええ、ガンバってクリスティーヌ!あ、味見とかは私止めておくわね、だってせっかくのあなたの手作
り作品をあの人を差し置いてさきに食べちゃったら申し訳無いもの!結果だけ後で聞かせてねv」
「―――――!そんな、冗談じゃ、ないって、本当だって、そんなッ・・・・・・!!!!!?!」
嬉しそうに走っていった親友と傍で何やら白くなっている後援人の姿を眺めていると背後から声が掛かる。
「メグ何をしているの?こんな所で。貴女達まさかまた何か企んだりしていた訳では無いのでしょうね?」
「!お母様!」
事情を簡潔に説明し終えると、自分の師が米神に指を当て沈痛な表情を浮かべるのをメグは見つめた。
「・・・貴女はどうして止めなかったの・・・・」
「止めたところで止まりそうに無かったんですもの。それに」
遠くから聞こえる楽しげな歌声とすぐ傍から聞こえる何かが抜け出ていくような音を聞きながら答える。
「…何だかんだ言って、あの3人結構幸せなんじゃないかしらと思って」
「・・・・・何やら寒気がするのだが・・・・・・・」
彼女の足元地下深く、一人呟く男の元にステキなラッピングの贈り物が届くxdayまであと3日。
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