そこがひやりとした外気に触れ、その初めての感覚に戸惑っていると、

「濡らしている」

という男の声が聞こえた。

「初めてなのに、濡らしているのか」

「え……?」

「ここだよ」

と言うが早いか、自分でも弄ったことのないあの場所に男の手が挿しいれられた。


「ああっ! いやっ!」

「初めてだというのに、こんなに濡らして……、どんな娘が顔を出すかと思えば、

 随分といやらしい娘のようだな」

「え? うう……、 な……に?」

男の言うことがわからなくて、泣き噎びながら聞き返した。

「これだよ」

男がそこから手を抜き、私の目の前に差し出す。男の指がてらてらと何かに濡れて光っている。


「本当に何も知らないのか……。これはな、おまえが男を欲しがっている証拠だよ」

「欲しがってなんか……」

「いないと言うか? 本当に?」

男がふたたび私の両脚の間に手を滑り込ませると、指でそこを擦られる。

「ああ──っ!」

生まれて初めて経験する快感だった。

男が指をどんな風に動かしているのかわからない。

単に前後に動かしているだけのように思えるが、なのにこの快感は何だろう……。

「ああっ、あ、あ……、あん……」

男が指を動かすたび、くちゅくちゅと水音がするほど身体から何かが出てくる。

「濡れる」という感覚を初めて知った。


「あっ、ひぃっ!」

男の指が私のそこにある何かを摘まんだ。

膝ががくがくと顫え、脚で体重を支えきれずに手首に体重がかかってしまう。

「立っていられないようだな」

と男が言って、柱に繋いだ手首を自由にしてくれた。


しかし、そのまま肩を押さえつけられ、床に座らされる。

あっと思う間もなく、床に押し倒された。

「いや! もうやめて、おねがい……!」

この機会にとばかりに哀願してみるが、すでに男の手が太腿の裏にかかり、

両脚を抱え上げられてしまった。

男の目の前に恥ずかしい部分の奥の奥までが晒され、仮面の奥からじっとそこに視線が

注がれているのがわかる。


男の頭がゆっくりとそこに近づいていく。

腰を捩って逃れようとするが、男の手で太腿を固定されており、腰だけが虚しく動く。

「あっ、やっ!」

先刻男の指で摘ままれた部分を、今度は男の舌がねぶっている。

つい今まで自分の身体にそんな器官があることも知らなかったのに、

男の舌でねぶられるその部分から鋭く切ない快感が腰から脊髄へと駆け上がる。

「ああ……、ああ、やぁ……」

腰をどんなに捩っても男の舌は私のそこから離れることがない。


最初はただただ初めての感覚の翻弄されていた私も、次第に男の舌がどんな風に動いているのか、

おぼろげながらわかるようになってきた。

男が舌先を硬くしてそこをつついたかと思うと、今度は舌でぐるりと周りを廻り、

唇で挟んだまま舌先をちろちろと這わせ、さらに強くそこ全体を吸われる。

「ああっ、ああああっっ! ああ、やぁっ……!」

動きを変えられるたびに少しずつ違う快感を与えられ、悲鳴を上げずにいられない。

「濡れるということも知らなかった割に、一人前に女らしい声を上げるじゃないか」

男がそう言って、太腿にかけた手を動かして自分の肩に私の脚を乗せた。


自由になった男の手が、ふたたび私の恥ずかしい場所へと伸びる。

舌でそこを弄ばれたまま、男の指が肉の合わせ目を這っていく。

さっきみたいに前後に擦り上げられる。

「ああっ、や……、やぁ……、ヘンになっちゃう……」

舌でねぶられている場所と指で弄られている場所が蕩けるように気持ちよくて、

でも、ふたつの場所に意識が引き裂かれて、頭が混乱している。

ああ、私、このまま気が狂ってしまうのかも……。


「あぁ……ん、あぁ……、んくぅ……」

我慢しても我慢しても、恥ずかしい声が出てしまう。

「気持ちいいらしいな……、これはどうだ?」

男の声がどこか遠くで聞こえ、そこを指で掻き回される感覚を感じるか感じないか……、

「ああっ! もう、もう、 ……ああ─────っっ!」

自分の悲鳴が聞こえ、目の奥で何かが弾けた。


どのくらい意識を失っていたのか、わからない。

気がつくと、私は男の膝に頭を乗せて横になっていた。

ぼんやりと男の仮面の輪郭を目で追っていると、男が私の後頭部を強い力で押し上げた。

「やっ、何っ?」

びっくりして叫ぶと、

「何じゃない、気がついたのならさっさと起きろ」と男が不機嫌そうに言った。


身を起こしてみると、くしゃくしゃになってはいるが、ちゃんと寝間着も着せられていた。

寝間着に包まれた自分の腹のあたりを眺めていると、

「なんであれの後をつけて来たんだ」と男の厳しい声がした。

「……」

「答えないなら、続きをするぞ、今度は気を失っても容赦しない」

「……だって、あの子、フィルマンさんの愛人だからって役をもらって、悔しかったんだもの……、

 誰かと逢引きしているみたいだったから、フィルマンさんに教えてやろうと思ったのよ……」

しぶしぶ答える。

「は、くだらん、そんなことか」

見下げ果てたというように男が言い、しかしどこかにほっとしたような様子が見受けられた。

「でも、あなただって恋人がフィルマンさんの愛人だなんて、嫌じゃないの?」

「これに懲りて、余計な詮索はしないことだな。

 私と彼女のことを誰かに話したら、その時こそおまえの純潔を奪ってやる」

私の問いには答えず、男が厳しい調子で言った。

「え、じゃあ……」

男が言った意外な言葉に聞き返すと、男がどこか楽しげにこう言う。

「ふん、せっかく男の味を教えてやろうと思ったが、気を失ってしまったからな……。

 ま、教えて欲しかったら、次の新月の晩にここに来るといい」

「誰が来るもんですかっ」

男がパンタロンについた埃を払いながら立ち上がるのにつられて自分も立ち上がる。


男が扉を開けた。

視線で「行け」と命じられ、私は夜明けの薄明かりが差す廊下に出た。


男に教え込まれた快感がまだ身体の奥でじりじりと熾火のように燃えている。

でも、私はまだ処女のままでいるらしい。

男の味……、彼が言った卑猥な言葉を思い出し、あの場所がきゅんと疼いた。


意識が戻る前、男の手が私の頭を撫でてくれたのをふと思い出す。

もしかしたら混濁する意識のなかで見た夢かも知れないが、

撫でられていた感覚が頭に残っているような気がする。

……いや、確かにそうだ、頭を撫でられて、私は目が醒めたのだ。


私を翻弄したあの指と、頭を撫でてくれたあの無骨な大きい手とが、

同じ男の、同じ手だとは何という不思議だろう。


次の新月の晩、行ってみようか、調光室に。

そうしたら、あの手の秘密がわかるだろうか……。





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