437 :続・楽屋にて :2005/10/29(土) 00:27:04 ID:ElZ8N7t5

窓の外、木の枝の間から男がこちらを覗いているのを見たときは正直驚いた。

普通の人間なら、鬱蒼と茂った樹木の間にあの男の姿を見つけるのは困難だろう。

しかし、長いこと闇の世界で暮らす私には、その細かな表情までがよく見えた。

私のクリスティーヌが今宵楽屋に誰も人を通さなかったので

彼女恋しさのあまり闇夜の木登りというところか。

オペラ座のパトロンがご苦労なことだ。

その上私と抱き合うクリスティーヌを見るはめになるとは。


私のクリスティーヌは美しい脚を晒したまま、寝椅子に横たわっている。

月明かりの下の彼女は一段と美しい。

あの男が執心するのも無理はあるまい。

おそらく、ストッキングを脱がせるところも見ていたのだろう。

これはあの男に思い知らせる良い機会だ。

私はカーテンを閉めようとした手を止めた。


「月明かりの下のおまえを見ていたい」

クリスティーヌの眸をまっすぐ見つめながら言う。

有無を言わせぬ私に一瞬懇願するような眼差しをむけ、そして恥じらうように目を伏せるクリスティーヌ。

気遣いの証にと、蝋燭の灯は落とした。

彼女はこれからこの青白い光の下で美しく乱れるのだ。

昨夜、地下の私の世界で乱れたように。

私は化粧着の上着を脱がせると足元に投げ捨てた。




昨夜――、見事な初舞台の後、私は彼女を地下へといざなった。

無数の蝋燭が灯る私の棲家で過ごした、素晴らしい夜。

未知の世界への甘い誘惑に戸惑い、震えていたクリスティーヌ。

私の腕の中で、怯え、ためらい、小さな抵抗を試み、

――そして、ゆっくりとそれらを手放していったクリスティーヌ。

私に全てをゆだね、全てを許し――

私はその美しく無防備な身体と魂を快楽の泉に投げ入れ、共にたゆたい、肉の悦びを共有した。

私の与える悦びにうち震え、私の与える初めての苦痛に耐えていた私の天使。


おまえはもう私のもの――。





私は月明かりの下でその白くすべらかな脚を撫で上げ、

あの男の視線を意識しながら彼女の下着の中にまで手を滑らせて行った。

その手を押しとどめようとする愛らしい仕草。

私を責めるような、媚びるような彼女の視線、すぐに聞こえてくる甘い吐息。

その手は化粧着の裾をつかみ、私の指が与える快楽に喘ぎ始める。


彼女を一糸まとわぬ姿にしてしまう訳にはいかない。

今夜は奴が見ている。

いやむしろ着衣の彼女のほうがよりいっそう艶かしい。

捲り上げられた裾、むきだしのすべらかな素足。

柔らかな胸はかろうじてシュミーズに隠れている。

あの男は艶かしく身をくねらせるお前を、手の届かない場所からただ見つめることしか出来ない。

あの男の脳裏にお前は私のものだと刻みつけてやろう。


クリスティーヌは眸を閉じて快楽に身を任せ、また切ない眸で私を見つめ、半ば開かれた唇で私の唇を求める。

この表情をあの男は見ることができない。

私だけのものだ。

そしてその甘い唇も。

私は彼女と深く長い口づけを交わす。

クリスティーヌはあの男の視線にその身を晒しながら、逝った。



<ラウル>


恐ろしげな仮面の男を嬉しそうに迎えていたクリスティーヌ。

裾を大きく捲り上げられ、ストッキングを脱がされ、

果ては下着の中に手を入れられることも彼女は嫌がってはいなかった・・・。

あの男に、その秘めやかな部分を愛撫することすら許し、

奴から与えられる快楽に身を任せていたクリスティーヌ。

自分が今見た光景が信じられない。




――カーテンの陰から、仮面の男がくったりと糸の切れた操り人形のような彼女を抱き起こしたのが見えた。

まだ荒い息に胸を上下させているクリスティーヌ。

上気した薔薇色の頬。閉じられた眸の長い睫毛。

甘い吐息を繰り替えす、その唇。

男の大きな手が愛おしむように、顔に掛かった彼女の髪を梳くようにかきあげる。


彼女の首はゆっくりと片側に倒され、その首筋に男の唇が這う。

薄く目を開けたクリスティーヌが小さく何か囁いている。

それは、だめ・・・とかいや・・・とか、何か甘い拒否の言葉だ。

もちろんそんな言葉を本気にとる男などいるはずもない。

男は今までと足と頭の位置を反対にして、彼女をゆっくりと押し倒していく。


クリスティーヌが着ているシュミーズの肩ひもが落とされ、

奴は何のためらいもなく胸の隙間に右手を差し入れた。

「ああっ・・・」

眉を寄せたクリスティーヌが小さな喘ぎ声を上げている。

声も息遣いも実際には聞こえないが、まるで耳元で囁やかれているかのようにはっきりわかる。

男はシュミーズの中の彼女の白いふくらみを弄び、その反応楽しむかのように彼女を見つめている。



ああ、何故あの場でクリスティーヌを組み敷いているのが私ではなく、あの男なのか?

そして何故、外木の枝につかまり、その姿を覗き見ているのがこの自分なのか?



胸のふくらみを弄ばれ、甘い吐息を漏らしながら身を捩るクリスティーヌ。

男は彼女と深い口づけを交わすと、彼女の脚の方へと消えて行った。

不意に、クリスティーヌが身体を起こし、足元にいるであろう男に何かを訴えている。

こちらから見えないカーテンの陰で、男は彼女の下着を取り去ろうとしている・・・!

両手で顔を覆うクリスティーヌ。

身を捩ってはかない抵抗を試みるその姿は男の欲望をさらにそそるだけだろう。


男であれば、自らの手で絶頂に導いた娘をこのままただ開放するはずが無い。

必ずその身体を開かせ、自分自身で味わいつくすに違いない。

――私はその光景を見つめ続けることが出来るのだろうか?



クリスティーヌの脚の間から仮面の男が覆いかぶさってきた。


男はクリスティーヌの上に覆いかぶさると彼女を見つめ、その髪や頬を指でそっと撫でながら何か語りかけている。

少し前まで男に抗がって不安げな表情をしていたクリスティーヌが、じっと男を見つめ返す。

彼女の手を取り、その指に口づけし、愛おしそうに仮面をつけていない方の頬に押し当てている。

やがて彼女の手が自分の意思で男の頬を撫で始めた…

あの男は彼女に何を言ったというのか?


男は頬から首、胸元へと唇を触れさせながら


クリスティーヌの上を移動して行き、

次に現れたときにはその手に彼女の膝をつかんでいた…

そしてその手を押し広げ――彼女の上に――


クリスティーヌがびくんと顎を上げ、頭をのけぞらせた。

そしてその唇から大きな吐息がもれる。

愛らしい眉が固くひそめられ、何かに耐えるような表情を――


彼女はあの男を、その身体に受け入れたのだ。





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