610 :死と乙女 :2005/11/07(月) 17:36:54 ID:ThhlJNR8

あの人によってわたしの歌は蕾をつけ、花開くことができた。

だがその人は音楽の天使ではなく、ただの愛に狂った一人の男だった。

仮面の下に隠された恐ろしい顔!

崩れかけ、引きつって一度見たら忘れることはできないお顔!

わたしが恐れているのはその顔ではない。

その中に潜む魂の歪みと狂気なのだ…。

わたしを主役にするため舞台を滅茶苦茶にし

ついにはジョセフ・ブケーすらも殺してしまった!

  
  お前の手をかしなさい、お前は優しく美しい!


そのときから音楽の天使は色あせ、歪み、地獄の天使へと変わってしまった。

あの恐ろしい天使はわたしを捕まえ連れ去ろうとするだろう。


  私は友なのだ、お前を罰する為に来たのではない


その甘い声と目に宿る力でわたしの決意と覚悟を消してしまうだろう。

彼の声は魔法のようにわたしの頭の中に響き、全ての感覚を麻痺させる。


  機嫌を直せ!私は恐ろしいものではない


恐ろしいと思っている反面、どうしてこうも胸が苦しいのだろう。

あの人と闇に生きるには、わたしの人生はまだ先が長すぎるというのに!


  私の腕に安らかに眠れ!


地下で腕に抱かれた感触が生々しく身体に残っている。

あの逞しい胸に抱かれ歌を聴かされたとき、わたしの魂は確かに喜びに打ち震えていた。

抗いきれない強い力!その甘い歌声と千人をも殺すことのできる眼力!

その全ての才を使って、彼はまたわたしたちに何かを仕掛けてくるだろう。

その時わたしは彼を拒み、踏みとどまることができるだろうか?



地獄の天使の手が、もう少しでわたしの腕を掴む。



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