12 :ファントム×クリス(鏡のうらで) :2005/11/25(金) 20:38:07 ID:ymsv8Zty

ある夜、クリスティーヌを連れて彼女の楽屋へ行った。

しばらく前からそこにあるものを見せたいがためだ。


クリスティーヌになぜ私を愛してくれないのかと問い、それに答えて彼女が、彼女の愛を信じるも

信じないも私自身の問題であって彼女の問題ではないと突き放すように言ってから

彼女はどうやら開き直ったものと見え、私の下で喘いでいるときにももう決して私を呼んではくれなくなった。


私の愛撫に啼き、喘ぎ、切なく吐息をつき、そして深い絶頂を迎えても、もう私を呼んでくれることはない。

今まさに迎えんとする絶頂を拒むように首を横に振りながら達するクリスティーヌを見ていると、

彼女の身体は確かに私のものだが、彼女の心まで手に入れることはできないのだと思い知らされた。


日々の暮らしのなかでどうしても必要があるときには、彼女は私に向かって「あの……」と呼びかける。

時にはこれまで通り「マスター」と呼んでくれるときもないではなかったが、

その声には愛情どころか、もう思慕のかけらも感じられなかった。

私を呼ぶ声は冬の冷気のように冷たく、私を見る目は永久に融けぬ氷のように冷たい。


彼女の師であった頃、私はクリスティーヌから尊敬と思慕とを捧げられていた。

夫になれば、それに愛情が加わるものと思い、どうにか彼女の愛が欲しくて足掻いた結果がこれだ。

私はクリスティーヌから憎悪と、……そしてほんのわずかに憐憫を……、捧げられている。



私を愛していると言いながら、決して私への愛などない妻が憎くて、何かしらの意趣返しをしてやりたくて、

…………そして、以前の彼女の声にあった尊敬と思慕とが混ざった優しい声で呼ばれるのは無理だとしても、

せめて交わっているときくらいどうにかして私を呼んでもらいたくて、私はしばらく前から気づいていた

あることを利用することにしたのだ。


鏡の裏から楽屋のなかが見える。

私の後ろからついてきていたクリスティーヌの方に振り返り、顎をしゃくって鏡のなかを示した。

「見ろ。あいつはああして毎晩のようにおまえの楽屋に来ては、ああやっておまえを偲んでいるのだ。

 ……どうだ、嬉しいか?」

ほの暗い部屋のなかには、椅子に腰掛け、化粧机の表面を撫でている子爵の姿が見えた。

やや右に頭を傾け、右手でそっと木の面を撫で続ける男の姿は、

憎い恋敵であることを差し引いても哀れを催させるものだった。

ある日突然、自分のもとからいなくなってしまった婚約者の肌を撫でているつもりになっているのか、

大事そうに何度も何度も指先で机の表面を撫でている。

こちらからは見えないが、泣いているのかも知れなかった。


あの男もクリスティーヌを心底愛していたのだ……、そう思うと、ふたりの間を裂いた己の短慮が悔やまれた。

あの男なら、あんな風に優しくクリスティーヌを愛撫し、愛しんでやることができるのだ……。

それにひきかえ、私は、あれほど愛したクリスティーヌに優しい言葉ひとつ掛けることができないでいる。


「ラウル……」

クリスティーヌの絞りだすような声がかつての婚約者の名を呼び、痛ましいものを見る目つきで

子爵をじっと見ている。

ああ、彼女のその声、その眸……。

私を呼んでもくれなくなったその唇で、おまえは恋しい男の名を呼ぶのだね……。

私を見てもくれなくなったその目で、おまえは恋しい男の背を見つめるのだね……。

ああ…………、激しい怒りと悲しみとが全身を満たす。


「恋しい男が今でもおまえを思っているとわかって、おまえも嬉しかろう?」

「……いいえ、わたしはあなたの妻ですもの……、もう……」

「ふふん、……あいつに肌を見せたことはないんだろう?」

返事はない。無表情で、何を考えているのかも読み取れない。

「おまえは確かに初めてだったものな……。

 いや……、……まさか、愛撫の味を教えられたのはあいつにではあるまいな……?」

「そんな……!」

クリスティーヌが物凄い形相でこちらを振り返った。

「はっ、下衆だと思うんなら思え」

彼女の剣幕に気圧されながら、なおも喰い下がる。

「……どうなんだ」

「……いいえ、一度も……」

「ふん、……まぁ、いい」
っと安堵したのがクリスティーヌにわかっただろうか。


皮肉っぽい顔になっているのだろうなと思いながら、彼女の身体に手を伸ばす。

「な……」

驚きとともに私を見たクリスティーヌの視線をかわし、彼女の衣服を緩めていく。

「やめて……、マスター、なにを……、なにをなさるの……」

久方ぶりに呼ばれた呼び名を耳の奥で反芻しながら、その声に滲む彼女の私への憎悪を感じる。

が、しかし、私はか細い声で抵抗するクリスティーヌの耳元で囁いた。

「あの扉は、おまえも知ってのとおり、こちらからはあちらの様子が見えるが、

 あちらからこちらは見えない。しかし、声は聞こえる。

 この程度の小声なら、いや普通の話し声でも聞こえる心配はないが、少しでも大きい声を出せば

 聞こえてしまうよ。おまえもいつもここで私の声を聞いていたのだからわかっているだろうが」

クリスティーヌが身を捩って私に抵抗したが、それでもかまわず衣服の紐やらホックやらを緩め、

いまや胸のあたりは手を挿しいれられるばかりになっていた。

後ろから首筋に唇を這わし、デコルテを撫でた。


「…………!」

声を立てず、身を顫わせたクリスティーヌに向かって言う。

「よくわかっているじゃないか……、

 まぁ、尤も、あいつにおまえの喘ぎ声を聞かせてやるのも一興だがね」

「どうして……」

「どうして、こんなことをするかって? おまえの願いを叶えてやろうと思ってね。

 あいつに肌を見せたことはないって言っていたな。さすがに私もあいつに見せてやる気なんて

 さらさらないが、おまえに気分だけでも味わわせてやろうと思ってな」

「……どういう……」

クリスティーヌが訝しそうに私を振り返った。

「……こういうことだよ」

そう言って、緩めた胸元をさらに寛げ、クリスティーヌの乳房を露出させた。


「やあっ!」

「いいのか、聞こえても……?」

「あ、あ……、ああ……、いや……」

両の乳房を下から掬い上げるようにして激しく揉みしだく。

身顫いし、唇を戦慄かせて耐える彼女の肩が大きく上下し、かすかな抵抗のしるしに

私の両手に掛けた手が顫えている。

くいしばった歯の隙間から甘い吐息が洩れ、喉の奥から切ない喘ぎがかすかに聞こえる。

乳首を絞りだすように、何度も何度もしつこいほど揉みしだいていると、徐々に乳首が立ち上がってくる。

肩口に顔をうずめ、首筋をなめ回しながら、なおも乳房を揉み続ける。


ようやくそそり立つように屹立した両の乳首をつまみ上げた。

「ああっ! ああああぁぁぁ…………!!」

声を殺してはいるが、そのぶん切なげな吐息が混ざった声で彼女が喘ぐ。

「あいつの姿を見ながら揉まれて感じたか」

「うぅっ、いや…………」

「ほら、あいつに見られている気になってくるだろ?」

乳首をつまみ、鏡のほうに向かって引っ張る。

「あぁっ!」

「さあ、あいつにこうされていると思え……」

言いながら、摘まんで引っ張り上げた乳首を捏ねくりまわす。

「んっ……、くうぅ…………」

「感じているのか」

「……いや…………、」


痛々しいほど紅く色づいた乳首を捻りまわし、時折、乳房を掬い上げながら揉みしだく。

指の腹で乳首を転がし、摘まみ上げる。

そのたび身体を捩り、激しく頭を振って抗うクリスティーヌの唇からは熱い吐息が洩れ、

私を拒絶しながらもその身を快楽に任せつつあることを感じさせる。

「いいんだろう……?」

「くぅっ……」

「こんなに硬くして……、嫌がっているふりをしたってすぐにわかる。……いいんだろう、ええ?」

「マスター……、ゆるして……」


顔を背け、楽屋のなかを見ないようにしているクリスティーヌの顎に手を掛け、無理やり前に向けさせる。

嫌がって激しく振る頭を捕まえ、耳元で囁いた。

「あいつにこうされたかったんだろう……?」

「うぅっ……、」

呻き声だけしか発しない彼女の声を聞き、否定して欲しくて聞いたと自覚した。

いいえ、あなたにこうされたいとずっと望んでいたのです……、と。

いいえ、あなたの手にこうされることだけを望んでいたのです……、と。


想像のなかの妻は私の手を、私自身を喜び迎え、優しい声音で私を求めてくれる。

だが、現実の彼女は私の手を拒み、私自身を拒み、哀しい呻き声を発しながらただただ首を振るばかりだ。


クリスティーヌを我がものにする前、どれほど彼女に焦がれ、彼女が手に入らぬことを嘆いて

暮らしたか知れなかったが、今にして思えば、それはどんなに甘く切ない日々だったろう。

この味気なく惨めな現実と較べ、どれほど豊かな想像のなかに自分がいたのか、いま初めて思い知る。

………想像のなかのクリスティーヌは決して私を拒まなかったから。


鏡の向こうで椅子を引く音がして、子爵が立ち上がった。

机の表面を名残惜しげに一撫でし、化粧机から離れる。

壁にかかった肖像画を見上げた。歴代のプリマドンナの肖像画だ。

一番新しい肖像画の隣には、いつか彼の婚約者の肖像画が並ぶはずだった。

絵にあるプリマドンナの顔に愛しい婚約者の顔を重ねて見つめているのだろう、

涙をこぼしているらしく肩が顫えている。


「おまえを想って泣いているようだよ」

クリスティーヌの耳元で囁く。

「…………」

「あいつのところへ飛んでいきたいだろう?」

「…………」

何を言っても返事をしない。

しかし、彼女の眸は言葉以上に雄弁だった。


「……行かせるものか」

我ながら陰気な声だ。

「おまえは私の妻だ、私のものだ、おまえがどんなにあの男を焦がれたところで、

 おまえがどんなにあの男のもとに飛んでいきたいと思ったところで、

 おまえを決してあいつには返さないよ」

悔しさと屈辱にまみれて彼女のスカートをめくり上げる。

「いやっ!」

とっさにスカートを押さえたクリスティーヌの手を無視し、アンダースカートもペチコートもめくり上げ、

顕わになった小さい下着に手を掛けた。

「マスター、いや、いや……、おねがい……」

涙を浮かべながら哀願する彼女を一瞬見遣り、それから一息に下着を下ろす。

「いやあ……!!」

声を殺したまま叫んで涙を溢れさせた。


嫌がって後退るクリスティーヌを壁際に追い詰め、閉じようとする膝に無理やり己の脚を割りいれる。

「やめて、やめて…………」

涙をこぼしながらか細い声で抵抗する彼女の大腿に手を這わせる。

そのまま両脚の間に手を挿しいれた。


くちゅという湿った音とともに溢れ出た愛液が指に絡みつく。

秘唇は水気を含んでふくらみ、莢から顔を出した肉芽が蜜にまみれて顫えている。

秘裂をそっと撫で上げる。

「あ、あぁ……ん……」

途端に洩れた媚を含んだ甘い声にかすかに哀しみの色が混ざる。


無理に身体を開かされ、与えられる刺激に反応してしまう哀しさ、惨めさを私はよくわかっていながら、

それでも私は彼女を苛まずにはいられない。

「やはり濡らしていたか……、あいつを見て感じているのか、

 それとも私の愛撫で感じているのか、どっちだ」

「あんっ! ……うう…………」

私の指遣いに反応しながら、それでも屈辱に泣くクリスティーヌをなおも責める。

「ふん、おまえにとってはどっちだっていいのか、……」

「どうして、どうして……」

哀しい声で問う彼女の秘唇を指で挟んで擦り上げる。

「あぁっ、いや……、いや……ぁん……」

「ふん、嫌がっている割には良い声で啼くじゃないか」

肉芽を指の腹で擦る。

「あんっ……、あぁっ……」

「良い声だが……、あんまり大きい声を出すとやつに聞こえてしまうよ、

 ……それとも聞かせてやりたいのか?」

「う、うう……」


「こんなに濡らして……、脚まで垂らして……、男のものが欲しくて欲しくてたまらないんだろ?」

「いや……」

「ほら、ちょうどあいつもこっちを見ているしな」


肖像画を眺めて泣いていたらしい子爵が向きを変え、鏡のほうに近寄ってきていた。

鏡の前に立ち、自分の顔が写っているあたりに手を伸ばす。

頬が写っているあたりをそっと撫でる。

おそらく己の顔の向こうに消えた婚約者の顔を見ているのだろう。

私自身、鏡など見るのもおぞましかったが、それでも何かの折に鏡を見ると、

自分の顔の向こうに愛しいクリスティーヌの顔を思い浮かべ、鏡の表面を撫でたことが何度もあるので、

今、彼がしていることの意味もその心持ちも手に取るようにわかった。

いなくなった恋人を懐かしむような眸をして鏡をそっと撫で続ける子爵の姿は、

哀れを通り越して痛ましいことこの上なかった。

その双眸からは涙がこぼれ、彼がいまだに恋人を忘れておらず、

その心の痛みをどうすることもできずにいることを知らせていた。


そして、彼がそこまで愛し、想う恋人は、その鏡の裏側で夫に責められ、泣きながら犯されている。

オペラ座裏で彼らが別れの抱擁を解いたとき、私を見つめた子爵の眸を思い出す。

婚約者を失う悲しみとともに、その眸には愛しい彼女が幸せになることを祈り、

その祈りを託す相手である私への無言の願いがこめられていた。

彼が今、自分の立つ鏡の裏で行われていることを知ったら、私は間違いなくその場で命を落とすことだろう。

刃もて刺し貫きたいほど憎い恋敵に、己の最も大切なものを差し出した彼の真情は踏みにじられ、

彼の大事な花はその花びらをむしりとられて無残な姿を曝け出している。

………今、彼が私を殺し、クリスティーヌを救い出してくれるのなら、むしろ喜んでそうされたい、

この地獄から私たちふたりを救い出して欲しい、そう思う自分がいた。


「ほら、ちょうどあいつもこっちを見ているしな」

「…………」

かつて婚約までしていた男の惨めな姿を見て、心優しいクリスティーヌが何も思わないわけはなかった。

私の目を懼れてか、何ものをも写していないような彼女の眸を見て、

この女はあの男ではなく私を選んだはずなのに、この女の夫はこの私なのに、という悔しさが募ってくる。

「ちょうどやつがこっちを見ているんだ、もっとよくしてやろう、……あいつの顔を見ながら逝くがいい……」

そう言いざま、クリスティーヌの片脚を上げさせ、貫いた。

「は、くぅぅぅぅ………………!!!」

声を出すまいと己の指を噛んだクリスティーヌの眸からは涙がこぼれ、

にもかかわらず彼女のそこは熱いぬめりでもって私を悦び迎える。



臀を抱えて下から突き上げる。

そのたび洩れる苦しい喘ぎを聞きながら、あれほどに愛しいと思い、心の底から愛していると思った

クリスティーヌとどうしてこんな交わりしか持てないのだろうかと思う。

あの初めての夜だけが唯一幸せな記憶で、あとの交わりの惨めさといったらない。

愛しい妻と快感を共有し、ふたりでいることの幸福をかみ締めながら繋がりたかった。

私は一体どこで間違ってしまったのだろう……?

……否、私が間違ったのではない、この女が、クリスティーヌが私を愛さないから悪いのだ。

私たちから幸福な交わりを奪ったのは他ならぬクリスティーヌだ。


クリスティーヌの身体ががくがくと顫え、入り口も奥も襞が激しくうねって私を締めつける。

私に抱えられたまま臀をくねくねと振っている。

彼女を罰するために強い刺激を与えてやりたくて、肉芽を爪の先で引っかくように弄ってやった。

身体の芯を貫くほどの刺激に喉の奥で声を上げた彼女の双臀を押し拡げるようにしてから大きく腰を入れると、

クリスティーヌが切なげに肩を寄せ、唇を戦慄かせて逝った。




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