411 :寝室編 :2005/12/26(月) 14:46:55 ID:KuLKTXOi

その時私は、寝室の片隅で着替えるクリスティーヌを見ていた。

衝立の陰で少し手間取りながらドレスを緩めていく後姿を。


外出から帰ると、それぞれに着替えを済ませてお茶にすることが多いが

今日はそうするつもりはなかった。

外にいるときから、彼女の横顔に、唇に、細い腰に、視線がとらわれてばかりで、

手を伸ばして抱いてしまいたい衝動を抑えるのが大変だったのだから。


自らのフロックコートとベストを椅子の背にかけ、壁にもたれながら彼女の後姿を見つめる。

私に見られていることなど考えもしないように、

クリスティーヌが身に纏っていたドレスを脱いでいく。

無防備なコルセット姿になり、白い肌があらわになる。

足音をさせずに近寄り、彼女がこれから着るドレスを手に取ろうとしたところを

後から抱きすくめた。


「……きゃ!」

驚いて身をかたくする様子まで可愛らしい。

「…外にいるときからずっとおまえを抱きたかった…」

なめらかな肌に手を這わせ、その可愛い耳に口づける。

「マスター…! いや…まだ昼間じゃないの…」

私から逃れようとするクリスティーヌの身体を引き寄せてこちらへ向かせ、

拒否を口にするその唇に口付けて塞いでしまう。


「!…」

クリスティーヌの動きがゆっくり止まり、

小さくこぶしを握っていた手の指が、徐々に開かれる。

「…ん……」

瞳を閉じた彼女が甘えるように鼻を鳴らし、口づけに答え始める。

差し入れた舌に自分の舌をそっと絡め、うっとりと身体の力が抜かれていく。

その身体を抱きしめたまま手を下ろしていき、尻の丸みを掴むように撫でた。

「あ……、だめ…マスター…」

唇を触れ合わせたまま、小さくつぶやくが、もうその口調はだめと言っていない。


コルセットはこういう時厄介な代物だが、

これさえ取り去ってしまえばあとは思うままだ。

片手でコルセットのレイシングに手をかける。

クリスティーヌの身体に火をつけ…思う存分に……


ふいに腕の中からクリスティーヌが逃げ出した。

「マスター!だめよ…今日はあとでメグが来るかも知れないのよ?

 さっきお話したでしょう…?」


…そういえばそんな話を聞いたかもしれない。

聞いたかもしれないが、もうそんなことはどうでもいい。

何か用事があるというならこちらから出向けばいいのだ。

ただし、おまえを抱いたあとで。


私から逃げ出したクリスティーヌが

明るい日が差し込む寝室にコルセット姿で立っている。

私の口づけと愛撫から逃れ、頼りない風情で目を潤ませているのがなお劣情をそそる。


「クリスティーヌ…必ず来ると約束したわけではないのだろう?

 帰りに寄れたら寄る、そんな話じゃなかったかね?」

彼女の元へじりじりと歩を進めながら答える。


「でも…もうすぐ来るかもしれないのよ?」

そう訴える彼女の後に、ちょうどベッドがあるではないか。

ここで押し倒さずにいつ押し倒せというのだろう?


「クリスティーヌ…」

彼女と見つめ合ったまま、1歩ずつ近付いていく。

抵抗を示した彼女には触れず、屈んでその耳元で囁いた。

「…私は今おまえが欲しいのだよ」


私の言葉に彼女が耳まで赤くなるのがわかった。

「何か用事があるなら、あとで私達の方から出向こう。

 今は…おまえに触れていたい」

目の前で小さな肩が震えている。

そっと指で唇に触れると、小さなため息と共に彼女が瞳を閉じた。


あたたかな耳の下のくぼみに、かすかに唇を這わせる。

「…あぁ……」

瞳を閉じたままやるせない声を上げるクリスティーヌの首筋を、

そっと唇でついばみながら行き来する。

小さな顎に口づけし、耳に口づけし、また唇のすぐ横にも口づける。


クリスティーヌが眉を寄せ、唇を寄せてくるような仕草を見せる。

「あぁ……」

私の唇はそれから逃れ、再びうなじを這い、顎のラインをたどり、

かぐわしい唇の横をかすめる。

愛らしい唇が私の唇を追う。

彼女の呼吸が大きくなり、コルセットからのぞく白いふくらみが目に見えて上下する。

すぐさま押し倒してしまいたい気持ちに駆られたが、思い直す。

私を拒否したクリスティーヌから、求めさせたい。

すでに彼女の身体の奥が、官能に蕩け始めていることはわかっていた。



私の唇にはぐらかされ、クリスティーヌが切ない声を漏らす。

「あぁ……ん……」

私を上目遣いに見上げる眼差し。

私の手はまだ彼女を抱き取ることもせず、そっと指先で胸を、首筋を、顎をなぞる。

頬に触れた指に彼女が唇を寄せる。

唇を開き、遠慮がちに紅い舌を見せ、指をそっと舐めた。

その淫らな仕草とまだ幼ささえ残るような清楚な容貌との落差に、

私自身がいっそう固さを増すのを感じる。


彼女の唾液で濡れた指で小さな顎を手荒く掴み、

唇を触れ合わさんばかりに近づけて問う。

「…おまえが抱かれたくないと言うなら仕方がない…

 あきらめるとしよう」

視線を絡ませたまま、手と身体を離していく。


「ああ…まって……待って」

クリスティーヌが私の手を掴んだ。

「……マスターはいじわるだわ…」

長い睫を伏せてつぶやく。

「私の腕から逃げ出したのはおまえだよ。

 いじわるなのはどっちだろう?」

「…ああ…マスター……おねがい…」

息を弾ませて私を求めるクリスティーヌをじっと見つめる。


「…おねがい………キス……して…」

「…キスだけかい?クリスティーヌ…」

もう一方の指で彼女の唇をなぞる。

可愛いおねだりだがまだきいてやるつもりはない。


「……キスだけなら断らせてもらおう。

 それだけで満足できるほど私は子供じゃないのでね」

「ああ……マスター……」


握り締めた私の手を最後のより所ででもあるかのように引き寄せるので

私の手が彼女の柔らかな胸に押し付けられている。

彼女はしばらく迷ってから、まっすぐにその瞳を見つめる私に向かって、

小さな声で囁くように言った。


「……マスターの、したいようにして……」

「私のしたいように…?

 私のしたいように、何をしろというんだね?」

「…ああ……、マスターの…したいように、…私を……抱い…て……」



言ってしまってから、クリスティーヌが頬を染めて視線を反らす。

彼女を見つめたまま、その唇に触れそうなほど近付いてさらに問う。

「私の、…好きにしていいんだな?」

視線を揺らめかせ、かすかに震えながら頷いたクリスティーヌの方から、

そっと唇を重ねてきた。



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