返事が返ってくるのを待たずして、ラウル・ド・シャニュイ子爵は大切な人の楽屋へと足を踏み入れた。

それというのも、彼女はここ最近いつにもましてぼんやりとしていることが多く、

あげく今日はプリマドンナのイヤミに言い返したりするなどと何だか様子がおかしかった、

という話を彼女の親友から聞いたからである。

やはり何かあったのだろうか、と心配が募る。

「ロッテ、大丈夫かい・・・・?」

部屋の中でソファーに倒れこんでいる少女を見つけ、ラウルは大いに慌てた。

「だ、大丈夫?ロッテ。何かあったのか??まさか誰かに苛めを???」

駆け寄って、その華奢な身体を抱き起こす。

とたんに、目を見開いて驚く彼女。その瞳は僅かに赤いように見える…!

「―――――!!」

一瞬にして頭の中で血液が沸騰する。

一体誰が彼女をこんなにヒドいめにあわせたというんだ!最近出没しているおかしな怪人とやらが、

彼女にまで嫌がらせを始めたのか…!?


怯えたような表情を見せる彼女を、ラウルは安心させようと微笑を浮かべ見つめ返す。

いつもは何でもないように振舞っていつつも、これほどの不安を内に隠し続けていたのか。

どうして気づかなかったんだ、僕の目は節穴?

などと自らの不甲斐なさをかみ締めつつ、ラウルは改めて決意する。

もう、彼女にはつらい思いなどさせない、彼女は自分が守り通す・・・・!!

ゆっくりと、だか力強く、ラウルは震える小さな身体を抱きしめた。

「…もう大丈夫だよ。怖いことなんて無い。君は独りじゃないから・・・・!」

一瞬にして彼女の身体から力が抜け、緊張がとかれるのをラウルは感じた。

優しく額に口づけを落とし、そのまま唇の方へとなぞっていく。

唇同士が触れる直前で、少女は焦らすように顔をそむけ、潤んだ瞳で此方を見つめてきた。

甘えているような彼女を見て思わず笑ってしまう。自分の大切な恋人。守るべき人。

(もう、お前の好きなようにはさせないぞ、ファントム・・・・!)

幸せな余韻に浸りつつも、ラウルは未だ顔知らぬ相手に胸中で宣戦布告した。



戦争を宣言されたその相手は、端的に言って、今それどころではなかった。

心の声というものが他人にも聞こえるものであるとするならば、はっきりと伝わっても不思議では

ないほどの距離にいるというのに。然し今や彼の思考は完全に停止してしまっている。

…どうしてこういう事になってしまっているのか。

少し前までは様々な疲れもあいまって、ソファーで寝こけていたような気がする。

誰かが来た、誰が来た、ということを理解するのに寝ぼけた頭では時間が掛かったのだ。

相手を憎き子爵であると知覚して、アクションに移るのも遅かった。

ぬけぬけと楽屋まで入り込んでくるとはいい度胸だ、いやまてこれはチャンスだろう

容易に首ぐらい絞められる!

瞬時に遍く殺人法と死体遺棄法が脳裏を巡るも、間髪入れずに今朝のクリスティーヌの

言葉が蘇る・・・・!

脳内で葛藤しているうちに、奴はいつのまにか此方に近づきあろうことか抱きついてきたのだ!

余りの事に、一瞬にして全てがホワイトアウトするのを余所に、更に追い討ちをかける子爵。

「…君は独りじゃないから・・・・!」

ある意味で、それは確かに彼が一番欲しかった言葉なのかもしれない。

だがそれだけに、この状況下では与えた破壊力も計り知れない。

男になんぞ言われたくはなかった、あまつさえ此奴の口から聞く事になるなど・・・・!

こちらが呆然としているのをいいことに、益々事を進めるラウルに何とか抵抗を試みるも、

体力勝負では話にならない。その上今日はそもそも疲労困憊してしまっている。

挙句、引きこもり効果で人肌に慣れておらず、肌をなでられると思わず目を閉じてしまう。

寸でのところで顔だけ背ける事に成功し、ウレシ・ハズカシ初きっす☆の相手が男である、

というこの世の終わりのような事態は回避したものの、状況は益々悪化していく一方だった。


小さな身体で心臓が早鐘のように鳴っているのが、こちらにも伝わってくる。

ゆっくりと彼女の頭を撫で髪を指に絡ませつつ、ラウルはふと、自分はなぜここに来たの

だったかと考えた。何でまたこんな展開になったのだったか・・・

そうだ、様子のおかしかった彼女を心配して具合を聞きに来たのだった。

そこで、思った以上にくたり、としていた彼女を見つけて・・・。

果たして、このまま続けてしまっていいものだろうか。疑問が浮かぶ。

然しながら、怯えた様子の恋人をこのまま独りにすることなど出来ない。そんなことを

したところで、ますます不安にさせるだけだ。

・・・何よりここで手を出さない、というのは逆に失礼な気もする。男として。

すっかり力を抜き、頬を染めこちらを見つめる潤んだ瞳を見つめかえしつつ

ラウルはそんな考えに到る。若干都合のいい考え方のような気もしないではないが。

髪に遊ばせていた手を、そのまま首筋から背筋の方へと下ろしていく。

中指で背筋のラインをつぅ、となぞり上げると少女は僅かに吐息を漏らし、そのまま体重を預けてきた。

気持ちよさそうなその反応を見て、ラウルは、これは、大丈夫、かな?と

自らにGOサインを出すことにした。

陶磁のように白く、僅かな力で簡単に手折れそうな白い喉に唇を這わせていく。首筋から

鎖骨に到達すると、そこを軽く吸うようにする。頭の上から切なげなため息が一つ、

降って来た。
半分開いたままの、薄いピンクの唇にキスしようとして、ラウルは先ほど彼女に焦らされてしまった

ことを思い出した。今までも、最後まで到達することはなかったが、キスまでは何度も交わしてきた。

けれど彼女はぼんやりとした瞳のままで、積極的な反応を示すことなどほとんどない。

別に嫌われているから、というわけではないらしいのだが。(本人からの言葉なので、信じても

いいだろう。)

なので、初めて大きな瞳でしっかり見つめられ、焦らすようにし甘える彼女をみて少し驚いたのだ。

驚きと幸福感。

同時に少々意地悪な考えも頭をもたげる。

(…焦らし返してみようかな)

おねだり、とまでは行かなくても自分からしてくれようとする素振りだけでも…!


キスは取りやめ、代わりに部屋着の結び目に手を伸ばす。

途端、少女の身体が震え顔を僅かに動かし、驚いたようにこちらを見上げる。

怖がらせてはいけないと、ラウルは彼女の頬を背中をあやすように優しく撫でていく。

あっさりと身体の力を抜いた彼女に、背中に回した手を今度は下ろしていく。

服の上からその細いウエストや太ももの外側を、指ですっと愛撫する。

触れるか触れないかのもどかしいその刺激に、少女の息遣いが乱れた。涙で濡れた長い睫毛がゆれ

甘く切なげな吐息がこぼれる。

今度は反対の手を、いよいよ形の良い胸のふくらみにまで持っていく。鎖骨を撫で、白い膨らみの

やわらかさを確かめるようにゆるゆるとさする。中心が次第に膨らんでくるまで待って、

服の上からその頂を食む。

「―――!」

細い身体を弓なりにそらせ、息を詰まらせる少女を倒れてしまわないように支えながら

つぼみを吸う。舌で舐め上げ軽く歯を立てる。薄布は次第に水を含んで、ぴちゃりという

妖しい水音が耳に届いた。


ランプに照らされたオレンジ色の闇に少女の白い影が躍る。

身を捩じらせ彼女が示した僅かな抵抗をわざと無視し、背中につめを立てた彼女の小さな手を取ると、

細く美しい指を口に含んだ。口内で転がしてじゅる、と吸い上げる。付け根から舌を這わせ、

またゆっくりと戻る。空いた手で耳やうなじを愛撫しつつ、丁寧に指に舌を絡ませると、

少女は脚をひくっと痙攣させた。

すっかり紅く色づき濡れた指を開放し、脚を攣らせてしまわないように滑らかな腿やふくらはぎを

丹念にマッサージしていく。ぞわ、とその美しい肌に鳥肌さえ立てて反応する彼女。

足の付け根から流れる一筋の雫に気がつき、ラウルは顔を上げた。

顔をすっかり薔薇色に染め上げる彼女の、溢れんばかりに涙をたたえた瞳と視線がぶつかったとき、

彼ははっきりと自覚した。

おねだりだの焦らすだの言う以前に、自分の忍耐の方が先に限界を迎えている。

彼女をしっかり見つめて、かすれる声で確認する。

「・・・いいかい?」

こちらを見つめたまま息をつくのを許可だと捉え、ラウルはその中心部へと手を伸ばしていった。

back  next

SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送