653 :ほのぼの夫婦 ラウルとクリス  :2005/05/23(月) 14:18:06 ID:zHq61KAe

嬉し恥ずかしの新婚初夜である。

ラウル・ド・シャニュイ子爵は、やや、いや、かなり緊張していた。

日もとっぷりと暮れて、花婿である子爵とその花嫁のクリスティーヌは寝室にいて、
既にゆったりとした部屋着に着替えてあったが、彼はどこからどうしていいかわからず、途方に暮れていた。

クリスティーヌを不安にさせないよう、ぼくがリードしなければならないというのに!

彼の困難は、愛する乙女に初めて触れる故ではなく、未経験であることに由来している。

あの時友人と一緒に行っていれば!あの日あの娘の誘いを断らなければ!
機会はいくらでもあったのに、それに一度も乗ることなくここまできてしまったとは。

彼はそんなことを思って天井を見上げた。一般的に、後悔は先に立ってくれないのである。

二人は長いすの端と端に座って、お互いちらちらと様子をうかがっているのだが、なかなか距離は縮まらない。

ここで、さっさとやっちまえよ!!というのはナンセンスである。
彼らだって大真面目に問題を解決しようと努力しているところなのだから。

 この場合の問題とは、「どのようにベッドに入るか」である。そして、それはほぼ、男性側の主題であろう。

 もう神の前で結婚の宣誓をしたのであるから、女性側は相手の誘導を待って、
それに素直に従う心の準備を怠らなければいいのだ。それがどんなに新妻の夢をぶち壊すようなお誘いであっても、である。

 この日のために、クリスティーヌはマダム・ジリーから結婚の心得というものを教えられてきている。

 「殿方に全てお任せして、辛抱強くしているのですよ」というのがそれだ。

 しかし、無言のまま、かちかちと部屋に響く時計の音ばかり聞いているのもそろそろ辛くなってきていた。

 辛抱強くってこういうことなのかしら?全てお任せしたくとも、何もアクションを起こしてくれないとなると、それもできないわ。
いつものようにキスをしてくれたら応えようがあるのに。なぜ黙っているのかしら…?

 問いかけるような視線を投げかけられたラウルは、みるみる血の気が引いた。
さっきは赤い顔だと思ったのに今度は青い顔になる夫に、クリスティーヌは心配そうにたずねた。

 「具合でも悪いの?」


二人の初めての夜である。何も仕掛けてこないというのはとんでもなく失礼な話ではないか。

しかし、体調不良ともなればそれもいたしかたない。ここ数ヶ月というもの、身分違いのクリスティーヌと結婚するというので、
子爵家では大変な騒ぎとなっていたのだ。

ラウルは家族を説得するために奔走し、忙しい日々を送っていたのである。

そのことを思い至って、クリスティーヌは今夜のことは諦めて、ゆっくり休ませてあげたいと心から思った。

「疲れていらっしゃるのね。ベッドでもうお休みになったら?」


ベッド!!

その一語にラウルの心臓は早鐘のように打った。解決の糸口を彼はようやく見つけ出せたのだ。

彼は、花嫁にはできるだけ冷静に、クールに、格好良く見せたかったので、
余裕たっぷりの笑顔をつくったが、実際それを見たクリスティーヌは、はり付いたような笑顔にちょっとだけぞっとした。

「ありがとう。心配してくれているんだね。…じゃあクリスティーヌも一緒ならベッドに入るよ」

よし!いいぞ、俺さま!!なかなかスマートな言い回しではないか。

クリスティーヌが頬を染めて小さく頷く。

なんて可愛らしいのだろう♪この女性が今宵ぼくのものになるのだ!

ラウルは小躍りしたい自分をなんとか押さえつけた。

良かった。具合が悪いのじゃなかったのね。…きっかけを掴もうとしていただけだったんだわ。かわいい人♪

そんな風に思われているとはつゆ知らず、ラウルは花嫁の手をとってベッドまで連れてくると、二人でそこに腰を下ろした。



ベッドはふっかりと気持ちよく沈み、ラウルは押し倒したい衝動をぐっと堪えた。

あせってはいけない。あせってはいけない。あせってはいけない。

経験はなくともそのくらいの知識の持ち合わせはあるのだ。

上目遣いにそっとラウルを見つめるクリスティーヌを抱き寄せ、心臓をどきどきさせながらキスをした。

ぼくのクリスティーヌ!!

「愛しているよ」

キスを少しずつ深めてゆく。上くちびるを、下くちびるを吸うようになぞってゆくと、
花嫁の口は自然と開かれて、彼は舌をすべりこませた。

「…ん…っ」小さなうめきを漏らして、クリスティーヌも舌を絡めてきた。

「…ううんっ…」彼女は瞳を閉じてキスを味わっているかのようだ。
夫の首に細い腕をまきつけ、やわらかな体を押しつけてきた。

「ラウル…」クリスティーヌの甘えた声は欲望のせいである。ラウルは体中の筋肉を固くさせた。

片手で妻の腰を抱き、もう一方の手で背中や首をなぜると、かわいい声がもれてラウルは興奮した。
欲望はどんどんふくらんで、なるようになるさ!と本能に身をまかせるつもりになっていた彼だったが、
クリスティーヌの全てを知りたいと思った時、はたと気が付いた。


着物はどうするんだ?

極端なことを言えば、局部さえでていれば事は済むのだ。だがそれは愛の行為とは言い難い。
これを彼女の中に早くおさめてしまいたいというのが本心であっても、そのくらいの理性はまだ残っている。

さあ、どうする子爵どの?

いつどうやって脱げばいいんだろう。いつ脱がせばいい?
いや、待てよ…そもそもクリスティーヌの服はぼくが脱がせていいものなのか?自分が先に裸になるべき…?

妻を不快にさせないように裸にする方法を彼は一生懸命考えていた。
すると、「…どうしたの、ラウル?」と、クリスティーヌに潤んだ目を向けられた。

夫の気持ちを知ってか知らずか「もっとキスして…?」彼女はそう言うと、ラウルのくちびるにキスしたことはしたのだが、
少しずつずらしてゆき、ざらざらした顎に、筋張った喉にくちびるを這わせていった。

クリスティーヌのふっくらしたくちびるの感触にラウルは息を荒くした。

更に彼女は彼の着物に手を差し入れ、器用にボタンをはずし、筋肉で固く盛り上がった胸を、
引き締まった腹筋を、背中を、傷つきやすいもののように優しく愛撫しはじめた。

「…う…っ、ク、クリスティーヌ…?」



back  next





SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送