512 :ファントム×踊り子:覗きの代償 :2005/08/21(日) 03:37:44 ID:739bJCbL

隣のベッドの同輩が、時々真夜中に部屋を抜け出していることに気づいたのは

いつのことだったろうか。

彼女は、数ヶ月前に新しく就任した支配人のひとりであるフィルマン氏の愛人で、

最初はフィルマン氏との逢引きなのかと思っていた。

しかし、フィルマン氏とのデートには必ず着飾っていくのに、真夜中に部屋を

そっと抜け出すときには大抵寝間着にショールを引っ掛けた程度の格好だし、

第一、真夜中からデートに出掛けて行くこと自体が考えにくい。

相手はきっとこのオペラ座にいる誰かなのだ。

フィルマン氏の愛人になってから、それまでは私たちと同じように群舞しか踊って

いなかったのに急に大きな役をもらえるようになった彼女が妬ましくて、

私はなんとか彼女の逢引きの相手を突き止め、フィルマン氏に知らせてやろうと考えた。


そして、とうとう今夜その機会が訪れた。

彼女が寝間着のままショールを羽織って部屋を抜け出すのを見届けると、

私もベッドからそっと降り、同じようにショールを引っ掛けて部屋の外へと出た。

気づかれないよう、かなり間を空けて後をつけて行く。

彼女はその手に蝋燭を持っているが、こちらは蝋燭をつけるわけにはいかないので、

暗がりに足を取られないよう、精一杯注意しながら後を追って行く。


どうやら逢引きの相手とは調光室で待ち合わせているらしかった。

この先には調光室しかないことがわかっているので、私は途中で足を止め、

彼女が調光室に入るのをこの目で確かめた後、ゆっくりとその部屋に近づいた。


低くくぐもった男の声と彼女の声とが途切れ途切れに話すのが聞こえたが、

ごく小声で話しているのか、どんなことを話しているのかまでは聞き取れない。

扉に耳を押し当てたままでいると、硬貨が床に落ちる音が聞こえ、それからほどなく

彼女の艶めいた喘ぎ声が聞こえてきた。


やっぱり男と逢引きしていたんだわ……。

お金のやりとりをしていたみたいだったし、もしかしたら春を鬻いでいるのかも……。

どちらにしたって、フィルマン氏に告げ口したら面白いことになるわ……。

まったく、愛人になってまで役が欲しいなんて、図々しいにもほどがあるわ。

あのぼんやりのクリスティーヌがソロで歌えるようになったのだって悔しいけど、

あれは実力だもの、仕方ない。

メグだって、マダムの娘だから贔屓されていると思いたいけど、実際は二役ついても

仕方ないくらい上手いしね。

だけど、あの子のは実力じゃないもの……。

そんなことを考えていると、彼女の「ああっ!」という悦びに満ちた声が聞こえた。

一体、誰としているのかしら……? 告げ口するためにも、誰か確認しなくっちゃ……。


そっと鍵穴から中の様子を窺ってみる。

白いシャツに黒いパンタロンを穿いた男の背中が見えた。

あんな黒髪で背の高い男なんて、このオペラ座にいたかしら……?


その時、男が身体をずらし、彼女の姿が目に入った。

胸を大きく肌蹴させ、その頂は真っ赤に充血して尖っていた。

男の与える快感に涙を滲ませ、うっとりとした目つきをしている。

男の手が彼女の寝間着の前を割る。

「こちらはどうなっているかな……」という声が聞こえた。

好色そうでいてどことなく冷たいその声に、腰のあたりにじわりとしたものが拡がる。


彼女の脚を持ち上げて秘所を弄る男の腕の動きが大層生々しい。

後ろ向きにされた彼女に覆いかぶさり、彼女を突き上げる男の腰の動きに、

男が女を愛するときにはあんな風に獣じみているものなのかと、思わず目を奪われた。


身支度を整えたふたりがようやく部屋を出ようとする動きを見せ、私は初めて我に返った。

柱の影に隠れる。

彼女が廊下に出るのを見届けると、男が扉を閉めた。

彼女に気づかれずに部屋に戻るために、柱の影でじっと彼女の姿が見えなくなるのを待った。


彼女ったら、すごい乱れようだったわ……。

最後には泣き叫んでいた。あれが逝くってことなのかしら……。

なんだか、私までヘンな気持ちになっちゃった。


一体、いつ調光室の扉が開かれたのか、さっぱり分からない。

扉が開け閉めされる音も気配もなかったはずなのに、はっと気づいたときには、

私の目の前に先刻まで調光室にいたはずの男が立っていた。

見上げて、思わず息を呑む。

男の顔には黒いマスクがあった。小暗い調光室にいるときも、扉を開けたときにも

気がつかなかった。

この男は一体、誰なの……?

顔を隠しているということは、オペラ座に出入りする高貴な人たちの誰かなのかしら……?


「そこで何をしている」

男が厳しく咎める声音で問う。

「べ、別に何も……」

「何を見た」

「何も……」

「彼女の後をつけてきたのか」

「後をつけてきたわけじゃないわ……」

「……語るに落ちたな」

「……!」


男が私の腕を掴み、強い力で調光室に連れ込まれた。


両腕を後ろ手に縛られ、柱にくくりつけられる。

男の手が顎に伸びてきて、顔を上げさせられた。

「なぜ後をつけてきたんだ」

「……」

男の指が首筋を遡っていく。

耳元で手を裏返し、指よりわずかに冷たい爪が撫でるように首筋を下りていく。

腰のあたりにぞくりとした感触が沁みてくる。

「答えたくないか……。ならば、答えたくなるようにしてやろう……」

そう男が言って、寝間着の胸元に手を掛けた。

「いやっ! やめてっ!」

先刻、彼女が大きく胸を肌蹴させ、男の愛撫を受けていた様子が思い浮かんだ。


男が口を手で塞いだ。

「大声を出すと……、わかるな?」

男の手が首に掛かり、軽く喉を押さえられた。

軽い力だったのに思いのほか息苦しくて、恐怖がじわりと湧き上がってくる。


ふたたび男の手が胸元に伸びてき、器用にボタンをはずしていく。

「あ、あ……、おねがい、やめて……」

小さい声で抵抗してみるものの、あっという間に腹までボタンをはずされ、

男が袷を持って左右に広げた。

「ああ……」

生まれて初めて男の目の前に乳房が晒される。恥ずかしくて悔しくて、涙が出てくる。

「ふん、なかなか可愛らしい胸をしているじゃないか、……形がいいな」

男がうそぶき、顕わになった乳房に手を伸ばす。

「んんっ……」

ゆっくりと揉みしだかれる。

時折、指の先に力を入れ、揉みほぐすようにして揉まれている。

みなが寝静まった夜、ベッドの中で自ら揉んだことはあった。

けれど、それとは比べものにならないほどの快感が両の乳房から湧きあがってくる。

どうして、ただ肉の塊を円く動かされているだけで、こんなに気持ちがいいの……?

それも、好きでも何でもない、どこの誰かも知らない男の手で揉まれて……。


男の手のひらにあたっている胸の先が熱く火照ってくる。

親指の腹で乳首を押し潰すように転がされる。

「あぁんっ!」

突き抜けるような快感に思わず声が出てしまう。

「ここがいいのか」

男の低い声が羞恥心を煽る。

爪の先で頂をかりかりと弱い力で引っ掻かれる。

「あ、あ……、やだ……、やだ……」

知らない男の手で快感を与えられる悔しさ、惨めさに涙が零れる。

「嫌だという割に、ずいぶんと悦んでいるじゃないか」

頂を引っ掻く動きを繰り返しながら、男が好色そうに片頬を上げてみせる。


「随分と硬くしているな、これはどうだ」

男の指が乳首を摘まみ上げ、こりこりと揉まれる。

「あぁっ、いや……! もう、やだ……、たすけて……」

「……初めてなのか……?」

泣きながら訴えると、男がどこか優しさの潜む声で尋ねてきた。

涙を零しながら大きく頷くと、男が、

「そうか……、それならうんと良くしてやろう」と言った。

もしかしたら解放してもらえるかも知れないという甘い期待は打ち砕かれ、

けれど、どこかに男がやめないでいてくれたことに安堵している自分がいた。


男の顔が胸元に近づき、その息遣いを感じたと思うと、乳首を舐められた。

「あぁ……、いや……」

「うんと良くしてやると言ったろう? 

 私たちの秘密を知ってしまったおまえをただ帰すことはできないが、せめて楽しんで行け」

乳首を舌で転がされ、上下の歯で甘噛みされ、脳天に突き刺さるかと思うような快感を与えられる。

「いや……、いや……」

うわ言のように繰り返す自分の声がどこか遠くに聞こえる。


寝間着の裾に男の手が触れた。

裾をたくし上げるようにしながら、男の手が太腿を撫でている。

「ああ……、いや……」

男の手がだんだんと脚のつけ根に向かって上がってくる。

「いや……、いや……」

男の手が触れているところから、ぞくぞくとした感覚が脚のつけ根に向かって走り、

その感覚がつけ根に到達すると、身体の奥がじんと痺れた。

下着の上からしか触ったことのない場所が熱を帯びてきているのがわかる。

その熱から逃れたくて、脚をすり合わせるようにして男の手をはずそうとするが、

後ろ手に縛られた両手を柱に括りつけられているため、紐が手首にくい込んで

今以上に身体を動かすことはできない。


「ああ、おねがい……、もう、やめて……」

哀願する私と男の視線とが合った。男の目が仮面の奥で笑う。

脚をすり合わせながら、身体の奥から湧き上がる快感を我慢しているのを

男はわかっていたのだろうか。

「自分で慰めた経験がないわけではあるまい?」という声が聞こえた。

「そんなこと……」

「乳首を舐めてやっている時からずっと脚をもじつかせているじゃないか」

「……」

「ふふん、図星のようだな」

鼻でせせら笑うように言うと、男の手が下着の両側に掛かった。

「やめて! それだけはゆるして……!」

「さぁて、どんな娘が顔を出すかな……」

男の手でゆっくりと下着を剥がされていく。

長じてからは親の目にも晒したことのない場所を、見知らぬ男の目に晒される恥ずかしさ……。

「ああ、ああ、いや……」

下着の縁が茂みにさしかかり、そして更に下へと移動していくのがわかる。

ああ、とうとう全部脱がされてしまった……。涙が後から後から溢れてくる。



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