146 :
コミケ
:05/03/08 01:40:11 ID:4RWI65ub
「アンドレ、売上金の方はどうなっている?」
「今回は凄いぞ、フィルマン。100万ペソどころじゃない」
「微妙に単位が違う気もするが、とにかく今回も我々の勝利ということだな、シャニュイ子爵」
「大変素晴らしい内容でしたね、ほら、特にここなんて…」
「そこは百合信者にはたまらない所でしょうな」
「ひとまず乾杯を」
初老の紳士が二人と、青年が一人、グラスを掲げている。
ここはパリ。厳密に言うと、パリのオペラ座だ。
彼らの他にも館内には人が溢れている。
そのオペラ座にはこんな垂れ幕がかかっていた。
『コミックマーケット5in花の都』
この3人は、世に言う同人活動仲間である。サークル名は『オペラ座』
活動ジャンルはその他創作に位置するが、男性向けなので参加日は3日目だ。
ここオペラ座では夏、冬と年に2回、同人誌即売会が行われているのだ。
「今回のメグクリ同人誌『Slave』は2時間で完売だったそうですね、ミスター・アンドレ」
「えぇ、シャニュイ子爵。貴方がパトロンのお陰で我々は本を刷れるというもの」
「全くです。最近は創作ジャンルも注目株。しかも我々は今回も売り上げナンバー1です。」
「シャッター前だったしねぇ。でも冷房がきかなくて困るよ」
「企業の列より凄かった。私としては企業なら『ようむいんさんだ〜いすき2』の…」
オタク話に花を咲かせる三人の創作ジャンルは、アンドレ、フィルマンの二人が支配人を勤めるこのオペラ座の、踊り子達。
どの娘も美しいが、飛びぬけているのがメグ・ジリーとクリスティーヌ・ダーエだ。
この二人、子供の頃から共に寄宿生活をしているだけあり、とても仲がいい。
「ここであえてメグを攻めにする所がポイントですな」
アンドレは口ひげを弄びながら、自分達の作った同人誌に視線を落とした。
「白だの黒だので流行ってるふたりはキモピュアも、一見受けに見える白が攻めですしな」
「キモピュアじゃなくてプリキュアですよ、ミスター・フィルマン」
「あ、そうだった。マッハになってからどうも萌えないメポ」
「そんなことよりも我々の輝かしい功績について語りましょう、お二方」
「今回は『ハンニバル』をテーマにした奴隷物。鎖に繋がれた二人がハンニバルの目の前で強制的に性交させられるとは。
いやはや、このプロットを仕上げたうちの脚本家は凄いね」
「まぁ、これを絵にした美術担当も凄いがね。うちの奴らは普段仕事をしないくせに、こういう時だけ気合が入る」
「凄い数のスタッフですね。コンテもいるんですか?演技監督まで」
あとがきに書かれているスタッフ達の数は、オペラ座の従業員の数と、そう変わらない数に見えた。
勿論、その最後を飾るのはパトロンであるラウルだが。
「大人数で作れば、それだけ出来上がった時の感動が倍になるというものです、シャニュイ子爵」
フィルマンは達成感からか、少し瞳を潤ませていた。
「既刊の『ドキドキ寄宿生活』と『バレエレッスン』『音楽の天使様が見てる』もかなり余裕をもって再販したんだが、これも完売だった」
「新規のファンが多いのだよ。金持ち引き篭もりの貴族のヲタどもは、ほいほい金を落とすからな。今度は総集編でも作るか」
「それよりは参加型のアンソロなんてどうですかね?」
自分の恋人であるクリスティーヌが、このような連中のいいオカズになっていることは、憎むべきことだったが、
知らず知らずのうちに、ラウル自身、この『百合』ジャンルにハマりつつあった。
「アンソロか…それもいいが、オンリーイベントもやってみたいものだな」
「我々もオペラ座ジャンルで始めてもう暫く経つが…そう、あのサークルだけは許せんよ」
「どこです?ミスター・アンドレ」
「O.Gのサークルさ」
「オージービーフ?」
「オペラ・ゴーストだよ!我々が何故か払っている二万フランの資金で何をしていると?」
「奴とは合わん。大体自分×クリスなんてバカげているだろう」
「…そんなオナニー野郎がいるとは」
ラウルはいらをつき隠せずに唇を噛む。
「サークル名は『ドン★ファン』いつも委託スペースで本人は現れない。ペンネームはファントム」
「なんか頭痛くなってきますね」
「果たしてそいつがこのオペラ座のO.Gと関係があるかどうかは実際の所不明だ」
「だが奴はいつも本でオペラ座の裏側を赤裸々に書いてるじゃないか」
アンドレが企業袋の中の同人誌を漁りながら声を荒くして言う。
「そうだ。あんなことを知ってるのはオペラ座に詳しい者だけだ。設定が細かいし、漫画もうまいから固定客もついてきてる」
「でも、普通は自分×キャラクターなんて流行らないでしょう?」
悩むフィルマンとラウルに、アンドレは一冊の本を広げてみせる。
「これが『ドン★ファン』の新刊、『薔薇の蕾』だ」
「またベタベタなタイトルだな」
「表紙は蛍ピ入りだな、PP加工もいい感じだ。どこの印刷所だ?」
「そこはツッコム所じゃないだろう。ミスター・フィルマン」
「また凄い鬼畜な内容ですね…うっ、私は拡張ネタは好きじゃない」
「断面図というのもマニアックだ」
「だろう?だからオナニー本でも一部のマニアには売れるんだ。中にはファントムを自分と重ねる奴も多い」
本は前頁見開きという迫力で、仮面の男がクリスティーヌを調教、開発する過程が恐ろしく丁寧に描かれていた。
「ちなみに前回のコミケでは幼少時のマダム・ジリーをテーマにした陵辱本『チュチュの中身』という本も描いている」
「タイトルがヘボンだがどうも気になるな。ジリーたんハァハァ」
「これも一部のマニアに大好評だったと聞いている。豹の穴の通販でも、注文不可になっていた」
「我々のライバル、ということになるな」
「私達も通販をしてみては?やはり遠方の方のことを考えた方が客はつく」
「とりあえず、この後ブドウブックスに委託をしてみようと思っている」
「流石はミスター・アンドレ。手が早いな」
「使い方を間違っている気もするがな」
アンドレは一息つき、空になったダンボール箱の山を見やった。
「とにかく今回は乙。今度は冬コミだな。次回の新刊はどういった内容がいいかね」
「久々に男性と絡ませてはいかがでしょう?」
ラウルは、自分とクリスの同人誌を想像し、思わず提案した。
「駄目だ。『オペラ座』同人誌は百合であるからこそ売れる。まぁ、ストーリーも絵も、プロが描いているからクオリティが高いという点もあるがね」
「そ、そうですか…orz」
三人は、撤収作業に入りながらも、最近の萌えジャンル等を熱く語り合っていた。
それを、柱の影から覗く一人の男。
全身コスプレの男だった。
「サークル『オペラ座』私の音楽の天使を女同士でヤらせるとはなかなか萌…じゃない、馬鹿にしてくれている」
コスプレ衣装は女性用下着を顔に被った物。
しかし、どう見てもコスプレには見えず、ただの変質者だった。
「私のサークルは、だんだんと認められてきている…女同士も萌えジャンルなのだろうが、男性向けはやはり鬼畜陵辱こそが真髄。
顔の分からない男に犯されるという恐怖がクリスティーヌ、お前の美しさを更に…はっ!!」
パンツの男は、急に何かを思い出したように、股間をまさぐり出した。
そこから出したのは古びた羊皮紙。楽譜だった。
サラサラとそこに何事かを書き付ける。
「考えてみれば私は彼女の先生、マスターじゃないか。今度の新刊は教師と生徒パラレルで行こう。私は音楽教師で彼女は生徒…萌える、これは萌えるぞ」
その後、オペラ座の外にあるのこぎり型のオブジェに登り、奇声をあげている下着をかぶった男が逮捕されたというのは、また別の話である。
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